お待たせしました。今回の旅行記最終回にして唯一の鉄ネタです。
でもその前に、油断していると「何だこれは…!?」とつぶやいてしまう場所を通りました。
身延方面から、結構なうねうね道である国道300号を進み、トンネルを1本抜けた先に、それは突然現れるのですから。

広大な湖と富士山が、何にも遮られることなく視界の真正面に現れます。
ここが富士五湖の一つ、本栖湖です。
はて、こんなアングルの富士山は何となく見たことがあるぞ?デジャヴ…?
ご存知の方も多いと思いますが、ここから見た富士山こそが、千円札の裏面に描かれた富士山と同じものなんです。
お手元の千円札(もしくは新渡戸稲造の旧五千円札)と見比べてみてください。
正確には、写真家の岡田紅陽が、この付近から1935年に撮影した作品「湖畔の春」をもとにデザインされたという経緯があるそうです。
ちょっとした駐車場に停められるようになっているのですが、皆さん一様に千円札を取り出していたのが面白かったですw
ちょうど1年ぐらい前に、モー娘。の某メンバーが夏目漱石の旧千円札と野口英世の千円札並べて「どっちかが偽札!?」とか言って騒然となったみたいですね。
お札の写真載せるなら「見本」とか赤い斜線入れるとかしようね(そこかよ いや、むしろそっちの方が「知らないではすまされない話」です。
さらに移動すること2時間、今回の旅行最後のポイントである都留市にやってきました。

あの橋を見れば、もう目的地はお分かりですね。


ついに来たぜ、山梨県立リニア見学センター!
いやが上にもテンションが上がります。
いくつか断っておくこと。
以前は実際にリニアに体験乗車することができましたが、実験線の延伸工事に伴って、現在は一旦中止されています。
それから、噂のL0系に会えたりするわけでもありません。
もちろんそれらは承知の上での訪問。ただ、もうちょっと賑わってもいい…。

「実験線の延伸工事」と軽く書きましたが、この実験線は将来、中央新幹線の軌道に転用されることを前提としています。
つまり、中央新幹線の工事は事実上すでに進行していると言い換えることもできるわけです。
まさに目の前でその光景が展開されているわけで、わくわくせずにはいられません。
そいじゃ、早速館内でリニアについて勉強していきませう。
そもそも、リニアには浮上するタイプ(一般的にイメージされる「リニアモーターカー」)と、浮上しないタイプ(鉄輪式)の2つあります。
「リニア」というのはざっくり言えば、磁石を地上と車体の両方に置いて、この2つが反発したり引き寄せたりする力を利用して進むわけです。
後者の浮上しないタイプは、各地の地下鉄(大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、都営地下鉄大江戸線etc.)でとっくに当たり前に使われる方式になっています。
急勾配に強いという点のほかに、リニアモーターは普通のモーターと比べて小さいため、車体を小さくでき、つまりトンネルの断面積を小さくして建設コストを安くできるなど、多くのメリットがあるためです。
一方、前者の浮上するタイプ(これも方式はさまざま)は、世界各地で研究・実験が進められてはいるものの、
現在営業運転をしている路線は全世界でみても、日本の愛知県にあるリニモと、中国の上海トランスラピッド、それから韓国の大田にある国立中央科学館内の路線、以上の3つしかないんです。
過去にはイギリスなどでも営業運転する路線がありましたが、いずれも廃止されたようです。
これらの路線のうち、高速運転を行っている上海トランスラピッドはその名の通り、ドイツの「トランスラピッド(Transrapid)」という方式を採用していて、最高速度は430km/hです。今のところ、営業運転する鉄道としては世界最速です。
ただトランスラピッドの短所としては、8mmほどしか浮かず、地震によって地盤がずれた際、また通常時でも軌道整備が少しでも不十分であった場合などには、車両と軌道がこすれる接触事故の危険性が高くなる点が挙げられます。
日本はドイツや中国とは比較にならないほど地震が多いことを考えると、リニアももう少し浮上する高さを上げることが求められます。
で、中央新幹線では、JR総研とJR東海が主体となって開発してきた超伝導リニア、またの名を「JR式マグレブ(Maglev =MAGnetic LEVitation)」という方式が採用されます。
JR式マグレブは、トランスラピッドと何が違うのでしょうか。
トランスラピッドで使われる電磁石は、理科実験でも作る普通の電磁石です。コストが安いというメリットがあり、停車中も常に浮上しているのが特徴です。
一方、JR式マグレブは、「超伝導電磁石」の原理を利用します。私おもっくそ文系なので、以下間違ってたら突っ込んでくださいね。

一般的に、金属は温度が下がれば下がるほど電気を通しやすくなります。
これをマイナス200℃とかいうレベルの超低温まで冷やしたとき、電気抵抗がゼロになる現象が発生するんだそうです。これが「超伝導」。

↑宮崎実験線(1977~1996年供用)で使用されたMLU001型の超伝導電磁石です。上部のタンクに液体ヘリウムが入っていたわけです。
抵抗がないわけだから、永久的に電気が流れ続ける状態が生じます。抵抗がないということは発熱の心配もないので、大きな電気を流しても大丈夫。
これによって、超強力な電磁石を作り出すことが可能になるわけです。
この電磁石を車両に搭載して、あとは軌道側のコイルと作用しあうことで、浮上しての超高速運転が実現するということ。

JR式マグレブでは、車両が浮上する高さは100mm、つまり10cmです。
10cmも浮けばまぁ~多少軌道に狂いが生じても支障はないということですね。
ただ、最初から浮いていると磁気抗力が大きくなってしまうので、150km/h程度までは車輪で着地した状態で走るのが特徴です。
速度が乗ってきて、浮上の準備が整うと自動的に車輪が格納され、浮上走行に入るというわけ。
2003年の試験では、この山梨リニア実験線において、なんと581km/hを記録。ほぼマッハ0.5ですよ。
実験走行と言っても、立派に鉄道の世界最速記録を樹立。未だに破られていません。
なお、中央新幹線の設計最高速度は505km/hとされています。営業でもキリよく500km/h出してほしいですな。
超伝導方式を実現しているのは、日本のJR式マグレブだけです。世界の誰も形にできなかったものを、日本がもういつでも実用化できるレベルにまで練り上げています。
だからこそ、数十年という年月をかけ、実用化に十二分に耐えうる技術を確立してきた関係者の方々には、尊敬の念を抱くばかりです。

…まぁ、そういった原理のあれこれがサクッと学べる、サクッとした施設になっております。

3階からは、まさに中央新幹線が走ることになる軌道を間近で見ることができます。

名古屋方面。軌道上には作業用トラックがぞろぞろと止まっていますw

東京方面。下に見える屋根は体験乗車のためのホームです。
延伸工事が終わったら、体験乗車も再開される予定とのことで、今から楽しみです。
今回は車で訪問しましたが、公共交通機関だと結構行きづらい場所にあるのが難点です。
富士急行線の田野倉駅もしくは禾生駅から、いずれも徒歩20分程度かかるようです。
それでも、最先端の鉄道を目の当たりにできるこの場所には、一度足を運んでみる価値がありますよ。
(終わり)
- 関連記事
-
- 9/22 筑波山登山日記② (2013/09/24)
- 9/22 筑波山登山日記① (2013/09/23)
- 4/27~29 山梨春の旅まつり(ちょっぴり静岡) ⑦リニアはもう、「夢」じゃない! (2013/05/24)
- 4/27~29 山梨春の旅まつり(ちょっぴり静岡) ⑥噂の砂金採り! (2013/05/23)
- 4/27~29 山梨春の旅まつり(ちょっぴり静岡) ⑤図書館の次は駐車場戦争を (2013/05/22)