※2016年10月7日更新
★1回分の効力を知る★
18きっぷのスタンプ1個の効力について、今までの回では、「『1日』乗り降り自由」と、軽く流してきました。
しかし、もう少し厳密に定義する必要があるので、今回はそこを掘り下げたいと思います。
『1日』とは?
一般常識として、「『1日』とはいつからいつまで?」と聞かれれば、「0:00~24:00」ですよね。
もちろん18きっぷで言う『1日』も概ねこれに従います。「始発から終電まで」ではありません。「0:00~24:00」です。
24:00を過ぎた後は、たとえまだまだ終電にならないとしても、新しい日付のスタンプじゃないと乗れないという意味です。普通の乗車券とちょっと違うので要注意ですよ。
ところが、時刻表を見てみると、24:00を過ぎてもまだまだ列車が走っているところも珍しくありません。
こういった深夜の列車に乗っていて、途中で日付が変わるような場合はどういう扱いになるのか。
もちろん、電波時計と高精度GPSで100m単位の運賃の精算を…なんてアホらしいことは求められませんのでご安心を。
こういった場合は、『24:00を過ぎてから最初の停車駅』まで有効という決まりになっています。
たとえば、山陽本線下り、広島23:48発、普通 岩国行き(列車番号581M)に乗っている場合。
※2012年3月17日改正のダイヤです。もし今後ダイヤが変わった場合は、架空の列車として捉えてもらえればと思います。

新井口23:59、五日市0:02、廿日市0:06、…と停車していきます。
ここで、『24:00を過ぎてから最初の停車駅』は五日市となりますね。
ということはこの場合、すでに押されているスタンプは五日市まで有効です。
つまり、もし五日市で下車すれば、すでに押されているスタンプが有効なので、そのまま下車できます。
さらにこの列車に乗り続け、終点の岩国まで行く場合、岩国で18きっぷを駅員さんに提示するところまでは同じですが、ここで選択肢が2つあります。A・Bどちらを選んでもOKです。
A.五日市~岩国の運賃を現金で支払い、精算して改札を出る。
B.新しい日付のスタンプを押してもらって改札を出る。
夜が明けてから移動する予定がない場合は、Aを選ぶほうが有利と言えるでしょう。
逆に、夜が明けてからも再び移動するのであれば、もちろんBを選ぶほうが有利になります。
あるいは、五日市を出てから岩国に着くまでの間に車掌さんに申し出て、あらかじめAかBのどちらかの処理をしてもらっても構いません。
ただし!
この『24:00を過ぎて最初の停車駅まで』という決まりには例外があります。
と言っても、私たちにとってプラスの例外なので安心してください。
それは、「東京電車特定区間」と「大阪電車特定区間」内での扱いです。
※細かい説明は省きますが、東京や大阪に近い都市圏で、運賃が安く設定されているエリアと思ってください。
具体的には、それぞれ以下の図のエリアです。
☆東京電車特定区間

☆大阪電車特定区間

このそれぞれのエリア内では、なんと『終電まで』有効です!これは美味しいですね。
たとえば、平日ダイヤの京浜東北線。大宮23:11発、各駅停車 大船行き(列車番号2335B)。大宮から大船までの最終電車です。
この列車は大宮を出て、神田23:57、東京23:59、有楽町0:01、新橋0:03、…と、途中の有楽町で日付が変わります。
ところが、ここは先ほど図で紹介した「東京電車特定区間」のエリア内なので、有楽町を越えて新橋以遠も引き続きスタンプが有効!
終点の大船は1:09着になりますが、結局大船までエリア内なので、すでに押されている前日のスタンプで大船まで行けてしまうというわけです。
※勘違いしやすい区間※
・京葉線の特例エリアは途中の千葉みなとまでです。終点の蘇我はエリア外!
・JR宝塚線(福知山線)は特例エリアに入っていません!
では応用問題。
平日ダイヤの京葉線。東京23:30発、各駅停車 蘇我行き(列車番号2319Y)で、終点の蘇我まで行くとします。
停車駅と時刻は以下の通りです。

困ったことに、蘇我は千葉みなとの1駅先で、惜しくも電車特定区間のエリアをはみ出してしまいます。
しかもよろしくないことに、この列車、途中の新習志野で日付が変わってしまう。
さて、この場合、精算が必要なのはどこからどこまで?
1.新習志野~蘇我(240円)
2.千葉みなと~蘇我(190円)
答え。
2の「千葉みなと~蘇我(190円)」です。
電車特定区間の外が絡む場合は、電車特定区間の特例が優先されます。
この列車は途中の新習志野0:03で日付が変わってしまいますが、ここはエリア内に入っているので、海浜幕張以遠へ引き続き乗車できます。
ただし、このエリアは千葉みなとで終わりなので、前日のスタンプが使えるのは千葉みなとまでとなり、千葉みなとから先はこのスタンプは使えません。
よって、精算するのは千葉みなと~蘇我の190円となります。
逆に、エリア外で日付が変わった後、エリア内に入ってくる場合。
ちょっと複雑ですが、やはり電車特定区間の特例が優先されます。

平日ダイヤ。外房線、上総一ノ宮22:58発、普通 千葉行き(列車番号1228M)に乗り、蘇我で0:00発、京葉線の各駅停車 東京行き(列車番号2428Y)に乗り換える場合。
蘇我で乗り換えた京葉線の発車を待っている間に日付が変わってしまいます。なんてこった。
※本当は1本前の新習志野行きで先回りしておけばいいのですが、あくまで例としてわざと蘇我で待っています。
蘇我から千葉みなとまでは電車特定区間のエリア外なので、前日のスタンプは使えません。
さて、どうする?
どうせ20分待ちなので、蘇我で一旦改札を出て、千葉みなとまでの乗車券(190円)を買ってしまいましょう。
千葉みなとに着くと、特例の優先によって、前日のスタンプの効力が復活します。
ここから先は再び前日のスタンプで乗ることができる、という流れです。
ここで、特例が優先される根拠を少し考えてみましょうか。
一番最後のケースで、たとえば蘇我から千葉みなとまで列車を使わなかった(歩いた)人は、どう考えても千葉みなとから東京方面は前日のスタンプで乗れますよね。
ここで蘇我から千葉みなとまで列車を使いたければ、蘇我から千葉みなとまでの対価を支払えば何ら問題ないわけです。
こう考えると、電車特定区間の特例が優先される意味が把握しやすいでしょうか。
さて、電車特定区間のエリア内では1日の終わりは『終電』というわけですが、逆に1日の始まりはエリア内でも0:00です。
ということは、エリア内においては、例えば8月4日0:00~終電の時間帯は、8月3日のスタンプでも8月4日のスタンプでも乗れるという現象が発生するわけです。
ですから、上で挙げた乗り越しについても、8月4日の明け方からまた18きっぷを使うならば、現金の精算ではなく新たにスタンプを押してもらうほうがお得ということです。
ちなみに。
電車特定区間の特例を最大限生かすと、2016年現在、最も遅くまで前日のスタンプで乗っていられるのは、JR京都・神戸線、京都23:35発の普通 西明石行きです。
終点の西明石に着くのはなんと1:38!一般に、終着が日本一遅い終電とされています。
こんな列車でも、西明石はエリア内に入っているので、前日のスタンプで問題なく下車できるんですね。
なお、東京電車特定区間においては、中央線の東京0:20発(土休日は0:19発)の各駅停車 高尾行きが、最も遅くまで前日のスタンプで乗っていられる電車となります。
こちらは終点の高尾に着くのは1:37!かなり長い間、この電車が終着の日本一遅い終電とされていたのですが、2016年に上記の列車が設定されたことにより、この電車は終着が日本で2番目に遅い終電となりました。
いかがだったでしょうか。
「特例つながり」で、次回は「特例中の特例!特急列車に乗れる区間?」という内容を書く予定です。
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